フランス語の勉強を始めてみると、英語と違って教材の種類が少なかったり、馴染みのない女性名詞と男性名詞を覚えるのが大変だったりと上手くいかないことがあるのではないでしょうか。
私自身、フランス語の勉強を始めて2年以上が経ちますが、最初は特にフランス語ならではの発音や文法を覚えるのに苦労をしました。
今回は、フランス語を勉強したいけど何から始めたらいいのか分からない、なかなか上達せずに困っているという方におすすめの勉強法を紹介します。
フランス語学習を始める前に
フランス語を学びたいと思ったきっかけを思い出してみましょう。
仕事のため、旅行をもっと楽しむため、フランスの食や文化をより深く理解するため、移住するため、趣味のためなどフランス語を学ぶ目的がそれぞれあると思います。
目標を立てずに始めるとモチベーションが上がらず、途中で飽きてしまうかもしれません。
語学学習は特に継続が大切な分野ですので、まずは勉強する動機に合った目標を決めることをお勧めします。
例えば、最初の目標を「来年の春に仏検3級に合格する」とした場合、そのために「毎週フランス語レッスンを受ける」、「通勤時間にフランス語の学習アプリで勉強する」などの具体的な行動に落とし込むと勉強しやすいです。
趣味のために学習する方は、好きな映画や本をフランス語で観る、読むなど曖昧な目標になるかもしれません。
この時は、「毎日10分フランス語に触れる時間を作る」、「好きなことに関連する情報をフランス語で発信しているアカウントをフォローする」など具体的な行動を目標にすると続けやすいでしょう。
目標が特に思いつかないという方は、まずは次に紹介するフランス語の検定がおすすめです。
検定はレベル別に分かれていて、初心者も受けることができます。
また、試験対策問題集などの教材が豊富にあるため、勉強を進めやすくなります。
フランス語の検定
国内で受験できるフランス語の検定には、仏検、DELF・DALF、TEF、TCFがあります。
実用フランス語技能検定試験(仏検)
仏検はフランス語の実用能力を客観的に測る日本独自の検定試験です。
1級から5級までの全7段階に分かれており、準2級以上は「筆記」と「聞き取り」に加えて「書き取り」と「個人面接」があります。
春季試験と秋季試験の年2回行われます。(通常、1級は春季のみ、準1級は秋季のみ実施)
DELF・DALFと比べて検定料が安く、3級までは個人面接(口頭試験)がないため、初心者が最も挑戦しやすい試験といえます。
特に留学や仕事でフランスに行くなどを考えておらず、語学学習の指標として使うのであれば仏検がおすすめです。
程度 | 形式 | 受験料 | |
1級 | 「聞く」「話す」「読む」「書く」という能力を高度にバランスよく身につけ、フランス語を実地に役立てる職業で即戦力となる。 標準学習時間:600時間以上 | 筆記 書き取り 聞き取り 個人面接 | 14,500円 (春季実施) |
準1級 | 日常生活や社会生活を営む上で必要なフランス語を理解し、一般的な内容はもとより、多様な分野についてのフランス語を聞き、話し、読み、書くことができる。 標準学習時間:500時間以上 (大学のフランス語専門課程卒業の学力を備え、新聞・雑誌などの解説・記事を読み、その大意を要約できるだけのフランス語運用能力と知識が要求される。) | 筆記 書き取り 聞き取り 個人面接 | 12,500円 (秋季実施) |
2級 | 日常生活や社会生活を営む上で必要なフランス語を理解し、一般的なフランス語を聞き、話し、読み、書くことができる。 標準学習時間:400時間以上 (大学のフランス語専門課程4年程度で、読む力ばかりでなく、聞き、話し、ある程度書く力も要求される。) | 筆記 書き取り 聞き取り 個人面接 | 10,000円 |
準2級 | 日常生活における平易なフランス語を、聞き、話し、読み、書くことができる。 標準学習時間:300時間以上(大学の3年修了程度。) | 筆記 書き取り 聞き取り 個人面接 | 9,000円 |
3級 | フランス語の文構成についての基本的な学習を一通り終了し、簡単な日常表現を理解し、読み、聞き、話し、書くことができる。 標準学習時間:200時間以上(大学で、第一外国語としての授業なら1年間、第二外国語として週2回の授業なら2年間の学習に相当。一部高校生も対象となる。) | 筆記 聞き取り | 7,000円 |
4級 | 基礎的な日常的フランス語を理解し、読み、聞き、書くことができる。 標準学習時間:100時間以上(大学で週1回の授業なら2年間、週2回の授業なら1年間の学習に相当。高校生も対象となる。) | 筆記 聞き取り | 6,000円 |
5級 | 初歩的な日常的フランス語を理解し、読み、聞き、書くことができる。 標準学習時間:50時間以上(大学で週1回の授業なら1年間、週2回の授業なら半年間の学習に相当)。 | 筆記 聞き取り | 5,000円 |
仏検の詳細・申し込みは仏検公式ホームページよりご確認ください。
DELF・DALF
DELF・DALFはフランス国民教育省が認定した唯一の公式フランス語資格で、一度取得すれば無期限有効です。
そのため、フランス語能力を証明書として形にすることができます。
留学や仕事などでフランス語の能力を証明する必要がある方はDELF・DALFを受験するとよいでしょう。
DELF/DALFと仏検の対応レベルや学習時間の目安は次の通りです。
DELF / DALF | 程度 | 学習時間の目安 | 受験料 | 仏検の対応レベル |
DALF C2 | 熟練 | 1000時間以上 | 30,000円 | 仏検1級 |
DALF C1 | 自主的運用 | 800-950時間 | 28,000円 | 仏検1級 |
DELF B2 | 上級 | 550-650時間 | 23,000円 | 仏検準1級 |
DELF B1 | 中級 | 350-400時間 | 19,000円 | 仏検2級 |
DELF A2 | 初級 | 150-200時間 | 14,000円 | 仏検準2級 |
DELF A1 | 入門 | 60-100時間 | 11,000円 | 仏検3級 |
DELF/DALFでは入門レベルのDELF A1から筆記、聞き取り、書き取り、個人面接のすべての形式が組み込まれています。
個人で面接対策をすることは難しいと思いますので、マンツーマンレッスンなどで話す練習をすることをお勧めします。
DELF/DALFの詳細・申し込みは公式ホームページよりご確認ください。
TCF・TEF
TCEとTEFはどちらも簡単に言うとTOEICのフランス語版で、合否ではなく点数で結果が示されます。
テストの成績を記載した証明書の有効期間は2年間です。
TCFとTEFの主な違いは、認定する機関とレベル分けで、問題形式などは似ています。
TCF
TCF (Test de Connaissance du Français) は、フランス国民教育省が認定した総合的なフランス語学力を測るテストです。
点数に応じて受験者のレベルを、言語に関する欧州共通基準 (CECRL) の6段階で判定します。
必須試験である聴解、語彙・文法、読解と補足試験である口頭表現、文書作成があります。
受験料は次の通りです。
TCF(必須試験):17,000円
TCF(補足試験:筆記+口述):13,000円
TCF(補足試験のうち筆記試験のみ受験の場合):9,000円
TCFの詳細・申し込み方法は公式ホームページよりご確認ください。
TEF
TEF(Test d’évaluation de françai)はパリ商工会議所認定試験のことで、0~6の7段階で評価するマークシート方式の試験です。
試験である聴解、語彙・文法、読解と補足試験である口頭表現、文書作成があります。
ALFフランス語学校のホームページにて受験案内が出ています。
受験料は15,000円~となっています。(詳細はこちら)コロナ以前は日本文化協会にて受験が可能でしたが、現在コロナウイルス感染拡大防止のため試験開催が中止となっています。
現在、月1回程度の頻度で試験を実施しています。
目的別おすすめの学習法
日常会話をメインに学習したい場合
旅行やフランス人との交流など、日常会話レベルができればOKという方は基礎的な文法+会話の練習が必要になります。
逆に言えば、長文読解や複雑な文法、日常で使わない表現、使用頻度の低い単語の勉強は不要です。
仏検でいえば3級か準2級、DELFでいえばA1かA2、TCFでいえば100~300点のレベルを目標にするとよいでしょう。
勉強法としては、個人で単語の勉強をしつつ、週1回のレッスンで基礎的な文法や会話の練習が適切だと思います。
レッスンで使用しているテキストの復習や検定試験対策本の勉強を家で週10時間程度行えば、レッスン1時間+自宅学習10時間/週 × 18週間でおよそ200時間の勉強時間になります。
とはいえ、週10時間の勉強は大変かと思います。
まとまった時間をとれない場合は、隙間時間で単語だけでも勉強すると学習効率が上がるはずです。
日ごろから単語集を持ち歩いたり、スマホにアプリを入れて移動時間に聞いたりする習慣をつけると良いですね。
留学・ビジネスを視野に入れて勉強する場合
留学や就職を前提にした勉強の場合は、しっかりとした文法および発音の基礎固めとレッスン以外の個人学習の時間を長く取る必要があります。
日常会話レベルでは相手に伝わればOKですが、中級以上のレベルを目指す場合、発音や文法など細かいところまで正しいフランス語を身に着けるべきでしょう。
なぜなら、自分の発音がネイティブに近くなければネイティブの発音を聴き取ることができませんし、中級以上は文法が複雑になってくるからです。
より高度な語学を身に着けるには、授業の内容を何度も復習し、練習問題や音読などで反復練習していくことが大切です。
おすすめの勉強法は、単語+文法書(教科書)+練習問題集の繰り返し+シャドーイングです。
やることが多くて大変だと思いますが、続けていくと必ず実力がつきます。
とにかく楽しく学びたい・分野を絞って学びたい場合
会話をするためというより、自分の好きなことをより理解するためにフランス語を勉強したいという方は、レッスンに通わずに独学で学ぶという方法もあります。
最近は、Youtubeでフランス語を学ぶという方法もあるでしょう。
自分の興味のある分野について、フランス語で情報発信しているSNSをフォローしたり、フランス語の映画やYoutubeチャンネルを視聴するのもおすすめです。
辞書や参考書の選び方
辞書は値段も高いので、最初はGoogle翻訳や無料のアプリを使う人が多いのではないでしょうか。
私もその一人でしたが、最初から辞書を買っておけばよかったと思いました。
Google翻訳は時々意味が違うことがあり、無料のアプリでは頻繁に広告が出たり、表示される例文数が制限されていたりして不便に感じました。
辞書は一度買えば繰り返し使うことができるので、お金をかける価値はあると思います。
私はフランス語の先生に、「プチ・ロワイヤル仏和辞典」をすすめられました。
プチ・ロワイヤルは購入者特典として、PCやスマホで使えるオンライン辞典が付いています。
このオンライン辞典は、変化形・活用形からの検索や動詞活用表が閲覧できて優秀です。
自分で勉強のための本を買う場合は、単語帳と文法練習の本の2種類が基本となります。
単語帳は、あまり分厚いものよりも「入門編」など基礎的な単語が500~1000語程度載っているものを1冊買い、何度も繰り返し使うのがおすすめです。
「キクタン」は仏検レベルに応じた単語が収録されており、持ち運びに便利なサイズで使いやすいです。
文法練習の本を選ぶポイントとしては、
・練習問題が多め
・自分のレベルに合っている
・巻末特典などで重要単語の活用表がついている
・CDや音声ダウンロード機能がついている
仏検対策用の問題集などもいいでしょう。
初めの一冊は「書いて覚えるフランス語ドリル」がおすすめです。
数字、日付、重要な文法、動詞など、最初に学ぶべき項目が網羅されていて、フルカラーで見やすく、書店でも棚に並んでいることが多いです。
フランス語勉強で初心者がやってはいけない方法
私がフランス語を勉強して失敗した経験をふまえて、やってはいけないと思う勉強法について話します。
- 目標を決めずになんとなく始める
やはり、何か目指すものがあった方が具体的にすべきことがわかり勉強が進めやすいと思います。
私は、2年間ほど試験は受けずにフランス語のレッスンを続けていましたが、あまり上達せずマンネリ化していました。
これではダメだと思い、DELFの受験勉強を始めてから勉強時間が増え、語彙力や会話、聞き取りも上達しました。
・仏検やDELF/DALFなどの試験に申し込み、それに向けて勉強する。
・1年後にフランス旅行に行くために、日常表現が使えるようにする。
など、まずは丁度いい難易度の目標を決めてみましょう。 - 話すのが苦手な人がフランス語会話のレッスンを受ける。
対面のレッスンにはメリットとデメリットがあります。
メリットは、新しい文法や会話表現を教えてもらえることです。
特に、初心者は独学で勉強しているとわからないことが多いので、先生に教えてもらった方が効率的です。
発音の確認をしてもらうためにも、対面やZoomでレッスンを受けることをおすすめします。
デメリットは、レッスンに苦手意識を感じると、フランス語の勉強がストレスになって続けられないことです。
講師との相性が合わなかったり、人と話すことが苦手な人が1時間も会話を続けたりすることは大変だと思います。
レッスンが嫌で、フランス語の勉強も嫌になってしまうことが一番もったいないです。
その場合は、講師を変えてもらったり、グループレッスンにしたり、独学でテレビやYoutubeでフランス語の授業を聴講したりと、自分に合うやり方に変えるようにしましょう。 - 単語学習を省いて、いきなり長文に挑戦する。
私は、フランス語を始めて2カ月目に「星の王子さま」のフランス語版を買いました。
挿絵が多く薄めの本なのですぐ読めるようになるだろうと思っていましたが、文章の意味はほぼ分からず、途中で挫折しました。
その時はまだ過去形も未来形も知らなかったので当たり前なのですが…。
自分にあったレベルの教材を使うのが大切だと思います。 - 色々な参考書を買って、片っ端から手を付ける。
初心者向けの参考書は、問題数が少なくて絵が多く、端的に言うと中身が薄いのですぐに終わってしまうものもあります。
一通り読んだだけでは中々身につかないものなので、何度も繰り返し解く、例文を書き写す、苦手な部分を解きなおすなどし何周もすると良いと思います。
日常的にフランス語に触れる方法
外国語を学ぶときは、その言語に触れる回数を意識的に増やすことが重要です。
移動中や何かの作業をしながらでも良いので、楽しみながらフランス語を覚えていきましょう。
フランス語のドラマ・映画を観る
フランス語のドラマや映画を観ることで、リアルなフランス語の会話を学ぶことができます。
最初は話すスピードが速すぎてわからないかもしれませんが、知っている単語を拾っていけば、次第に短いフレーズを理解できるようになってきます。
PrimeVideoやNetflixで視聴可能なフランス語のドラマ・映画
「最強のふたり」
2012年に公開されたやや古めの作品ですが、非常に面白い映画です。
セザール賞の複数部門にノミネートされ、日本でも東京国際映画祭でグランプリを受賞し、国内で公開されたフランス語映画の中で歴代1位のヒット作となりました。
シーズン3まで出ているNetflixオリジナルドラマです。
フランス語勉強としても難易度が易しめで、さらに内容も面白いので続きが気になって見てしまいます。
怪盗ルパンを題材にしており、ミステリー要素があります。
パリの有名な美術館が出てくるシーンも見どころになっています。
YoutubeやSNSから情報収集
YouteubeやSNSは、用途に応じて使い分けすると非常に役に立つと思います。
Youtubeで日本語字幕付きでフランス人同士の会話を聞いてみるのが良いでしょう。
内容が面白いチャンネルを登録しておけば、楽しみながらフランス語に触れることができます。
私は「ベべチャンネル」を登録してよく見ています。
InstagramやX(Twitter)などのSNSは文字が小さくて見づらく意外とハードルは高い印象です。
パッと見て情報を拾えるのがSNSの魅力の一つですので、読むのに時間がかかるとつい飛ばし読みしてしまうことがあります。
フランス語で発信しているアカウントよりも、日本語でフランス文化の情報を発信しているアカウントをフォローして背景知識を養うという使い方がおすすめです。
語学を理解するには、その国の習慣や歴史などを知ることも大事とよく言われますので、語学学習の一環としてSNSも活用してみてはいかがでしょうか。
まとめ
英語と違い、フランス語は大学生や社会人になってから学ぶ人が多いため、勉強時間がなかなか取れないという悩みが多いと思います。
語学で大事なことは少しずつでも継続することです。
週に一回しか勉強できなくても、とにかく日常生活にフランス語を取り入れていく工夫をしてみてください。
また、誰かに教わったり、一緒に勉強する仲間を作ったりした方が、疑問を解決したりモチベーション維持に有効だと思います。
これまで紹介した、フランス語の試験、本、ドラマや映画、Youtubeなどを活用して楽しく学び、フランス語を学んでやりたかったことを実現してほしいと思います。
À bientôt!